うき「日が暮れましたね。電気、点けましょうか」
華「ん」
うき「…………」
華「ん?」
うき「……外、まだ騒がしいですね。マスコミの人が、あんなにたくさん……。このまま、夜通し帰らないつもりでしょうか?」
華「ん~」
うき「昼間、外に出なければよかった。私、あんなたくさんの人に囲まれたの、はじめてで……。怖くて、もう外に出られません……」
華「ん?」
うき「あ、いえ。ごはんのことはご心配なく。まだ、冷蔵庫に食材は残ってますから」
華「ん」
うき「はい、乃々さんが、ちゃんと買い溜めしておいてくれましたので。大丈夫です」
華「……ん?」
うき「え、結人くんですか? 今は、自分の部屋で眠っています。乃々さんのことが心配で、ずっと気を張っていて、疲れてしまったんでしょう。ただでさえ、結衣さんのこともあって……しばらく眠れていなかったようですから」
華「んん~?」
うき「私、ですか? ……え、と」
華「ん」
うき「はい……。正直なことを言えば、やっぱり、不安です。さっき、拓留さんとの電話でも話しましたけど……、佐久間先生までいなくなってしまったので……」
華「ん」
うき「私がこの青葉寮にはじめて来たときには、あんなに……賑やかだったのに。佐久間先生、乃々さん、拓留さん、結人くん、それに……結衣さん。とても温かい人たちで、血のつながりなんてなくても、家族ってこんなに素敵なものなんだなって、思えたのに……」
華「ん」
うき「でも今は、残っているのは結人くんだけで……。みんな、いなくなってしまいました……。私、どうしたらいいのか……」
華「んん」
うき「あ、そうですね。乃々さんは無事でしたし、拓留さんだって、あと少しだけ待っててって、さっき言ってくれましたもんね。信じて、待つべきですよね」
華「ん」
うき「結人くんも、あの歳で、あんな辛い目にあっても、周りに気を遣って、あんまり泣かないようにしているんです。それを考えたら、私も、もっとしっかりしなくちゃ……!」
華「ん!」
うき「え? 今なんて?」
華「んん~ん!」
うき「“それに私もいる”ですか?」
華「ん……」
うき「香月さん……! ありがとうございます。とても、心強いです。なんだか、ホッと安心できたような、そんな気がします」
華「んん」
うき「そうですね、私、もしかしたら、全部背負い込もうとしていたのかもしれません。ここには誰もいないなんて言っちゃいましたけど、そんなこと、ないんですよね。結人くんもいるし、香月さんもいてくれる。三人で力を合わせて、頑張らなくちゃいけませんよね!」
華「ん。ん~」
うき「え……“辛くなったら、私の胸に飛び込んでおいで”って、そんな……香月さん、だ、大胆です……。それに私たち、女の子同士なのに……」
華「んんんん」
うき「“いつも新聞部のみんなとスキンシップしてるから慣れてる”と? な、なるほど……、香月さん、オトナです……」
華「んんん。んん~んん」
うき「“人は抱きしめてもらうだけでとても安心できる生き物なんだ”ですか……。そうかもしれません。私も、ここにはじめて来たとき、結衣さんにそうしてもらって……不安だった気持ちが、すーっと消えていって、胸がいっぱいになって自然と涙が出てきて……とても不思議な感覚だったんです」
華「ん」
うき「ありがとうこざいます、香月さん。じゃあ、私が辛くなったら……抱きしめてください……えへへ」
華「ん」
うき「なんだか……照れますね……」
華「んん」
結人「あの……うき姉ちゃん、香月さん」
うき「え? あ、結人くん! いつからそこに?」
結人「ついさっき……。ところでうき姉ちゃん、今、香月さんとお話ししてたけど……香月さんの言ってること、分かるの?」
うき「え? ええ~っと、それはその……」
華「……?」
うき「いえ、それが、実は、全然分かりません……。願望で、だいたいこんな感じかなぁ、と勝手に解釈していました……」
華「!!!???」
結人「え……」
うき「す、すみません~~」